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武器のかち合う音が林に木霊していた。 「イルカ、大丈夫か?」 サカキが心配げに聞いてきた。今回のこの班のリーダーはサカキなのだ。 「大丈夫、増血丸も飲んだことだし、いける。ただ、ちょっと休ませてほしい。」 ここで任務を解かれでもしたら折角のAランク任務達成が夢に終わってしまう。ここは無理してでも任務を最後までやり遂げたいっ!! 「とりあえずあの暗部が戻ってくるのを待つつもりだから休憩はする。」 サカキの言葉に俺はほっとした。 「手当、私がするわ。医療忍術が使えなくて申し訳ないけれど。」 紅が申し出てくれた。くノ一は医療忍術の使い手が多い。だがそれは自分のチャクラの質や、忍術の向き不向きがあるから強要されるものではない。それに今回敵を殲滅できたのは紅の幻術のおかげなのだ。礼を言って労いはすれど、文句など誰が言うものか。 「ありがとう、頼むよ。」 笑顔で言えば、紅は頷いて救急キットを取り出す。 「いいなあ、俺も紅に手当してもらいたいぜー。」 ハシラが俺を羨ましそうに視線を向けてくる。ハシラも腕に切り傷を負ったようだが、こちらは自分で手当をしている。大した怪我ではないようだ。 「ひどい傷ね。」 傷を見た紅は表情こそ変えなかったが、口調は低く、少々暗いものだった。 「そうだな、ちょっと深いけど、戦闘中に止血剤も飲んでたし、血は止まってるだろ?」 「そうね、でもあまり激しい動きをするのは止めておいた方がいいわね。傷口が開くわ。それにしても、」 紅は血をぬぐって傷薬を塗っていく。 「それにしても?」 俺は紅の言葉を催促した。紅の性格は結構さばさばしているので、言いたいこともはきはき言う。その紅が言い淀むなんて、もしかして、そんなに傷が深いとか...? 「暗部を足蹴にした中忍を初めて見たわ。」 だが返ってきた言葉に俺は想像以上の衝撃が走った。フランパンでガンっと頭を殴られたような気分になった程だ。 「えーと、あれは不可抗力で仕方なかったからで、いつもは、その、俺はあんなことしないんだけど...。」 と言えば、紅はくすくすと笑った。 「別に非難はしないわ。暗部だって下忍だって、間違ったことを訂正しなければそっちの方が相手に失礼だわ。もしかして友達なの?」 「あー、まあ、そうなんだ。幼なじみって言うか、名前は教えられないけど。」 「当たり前よ。教えようとしたら傷を増やしてた所よ。」 紅はにこりと笑った。怖い、さすがくノ一のホープだけはある。ま、言うつもりは元からなかったけどね。 「イルカ、怪我は大丈夫なの?」 心配そうな声で聞いてきた。 「ばっか、生きてるだろ?傷も別に内臓までいってるものはなかったみたいだし、骨折も捻挫もしてないって。お前は心配性だねえ、でも荷物の奪還、よくやったな。お疲れさん。」 俺はにかっと笑って言ってやった。 「手当、俺がするから要人警護に戻ってていいよー。」 紅はカカシの行動に驚いている。と、言うか呆れている。っていうか俺、超絶なんか恥ずかしいんですけどっ。なんでそんな子どもっぽいことしてんだよお前はっ! 「ちょっと待てっ!折角紅が手当してくれるって言ってくれたのに何勝手なこと言ってんだよっ。」 「なによ、俺の手当は受けられないっての?イルカもやるねえ、こんな所でまでお得意の女をたぶらかせる術を発揮しちゃって。」 「だからたぶらかせてないっつのっ!俺は功労者だっ!!」 「はいはい、腕上げてねー、包帯巻くよー。」 カカシは聞く耳を持たないのか、てきぱきと包帯を巻いていく。う、確かに紅よりも手際がいい。そしてカカシの手当はすぐに終わってしまった。さすがだ、カカシの処置の手早さは衰えの兆しを見せない。ってそんなところでまた感心してる場合かっ。 「はーい、それじゃあ説明するんで聞いてちょーだいね。今回の任務は国家レベルまで引き上がったので俺がこのまま同行します。カエデさんは風の国にしばらくいるんでしょ?帰りは砂忍に護衛任務を依頼して下さい。俺たちの任務はカエデさんを風の国に送るまでだったはずだからね。イルカ以外に負傷者はいますか?いないようですね。負傷したイルカについては、目的地の方が近いからそっちで改めて治療をすることにします。リーダーは誰ですか?」 「俺です、サカキと言います。」 「ではサカキ、その案で行こうと思いますがいいですか?」 「はい。ちなみにこの任務はこの時点で指揮官は暗部に移行するのですか?」 「いや、このままAランク任務として続行することにします。なので俺はあくまで同行者の位置にいます。同じ班にいる者としてのカウントはしなくて結構。指揮権はサカキ、あなたのままでいいです。あ、ちなみにカエデさん、重要な薬を所持してるって最初にちゃんと報告してくれないと困りますよ。あなたの部下が不安になって知らせてくれなかったら今頃みんな死んでますからね、信用第一の商売なんですからそこんとこお願いしますよ?」 カカシはふざけた調子で、けれども有無を言わせずにそこまで話した。 「ごめんなさいね。お詫びに任務料、上乗せしておくわ。」 カエデさんは申し訳なさそうに言った。ここまで大事になるとは本人も思ってなかったのだろう。 |